食品表示に関する法律とトラブル防止策

食品表示の目的は、お客様に製品の品質、成分、安全性についての正確な情報を提供することです。食品製造メーカーにとっては、食品表示は法律上の義務であるだけでなく、商品のブランド価値を高め、法的コンプライアンスを維持するための重要となります。今回の記事では、食品製造メーカーの経営者が理解しておく必要がある食品表示のポイントなどについて、解説して行きたいと思います。

食品表示に関する法律について

食品表示はおもに食品表示法によって規定されています。食品表示法はお客様が食品を安全かつ安心して選べるようにするため、必要な情報をラベルに表示することを義務付けています。また、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)も関係しています。JAS法は、特定の農林物資や加工品に対する品質基準を設定し、その品質や規格に基づく表示を求めています。また、健康増進法に基づき、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品についての詳細な表示基準が設けられています。特に機能性表示食品は、事業者が科学的根拠に基づいて健康効果を表示できるもので、お客様に対して健康メリットを明確に提示することを目的としています。トクホは厚生労働省の許可が必要であり、機能性表示食品は事業者の責任で表示されます。これに伴い、経営者は法令に準拠し、お客様にとって有益な情報を正確に伝えることが求められます。

食品表示に記載すべき内容について

食品表示に記載すべき内容には、次のようなものが挙げられます。1つ目に「名称」です。食品の一般的な名称を記載し、消費者に何の食品であるかを明確にします。2つ目に「原材料名」です。使用されている原材料を、重量の多い順に全て記載します。これにより、消費者は成分を確認でき、アレルギーの有無を判別する手助けとなります。3つ目に「内容量」です。その食品の正確な重量や容積(グラムやミリリットル)を記載します。4つ目に「賞味期限または消費期限」です。この情報により、お客様は食品の鮮度を確認し、商品の安全性を判断できます。保存方法も併せて記載され、保管への注意を促します。5つ目に「保存方法」です。製品の品質を維持するために適切な状態で保管するための情報を提供します。6つ目に「製造者情報」です。製造者または販売者の氏名、所在地を記載します。これにより、問題が発生した際に問い合わせが可能となります。7つ目に「栄養成分表示」です。エネルギー量(カロリー)、タンパク質、脂質、炭水化物、食塩相当量を具体的に記載します。この情報は、栄養管理に役立ちます。そして8つ目に「アレルゲン情報」です。特定のアレルゲン(卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生など)について、必ず表示し、アレルギーを持つ消費者が安全に製品を選択できるようにします。

食品表示トラブルの防止策

食品表示のミスによるトラブルや製品回収は、お客様の信用を大きく損ね、大きな経済的損失をもたらします。特にアレルギーに関する正確な情報は、お客様の健康を守るために必須です。アレルゲン情報に誤りがあるとお客様に深刻な健康影響を及ぼす危険性があり、絶対に避けなければなりません。アレルゲン情報を正確に管理するためのプロセスやガイドラインを整備し、科学的根拠に基づいて情報を正確に伝える必要があります。トラブルを未然に防ぐためには、以下のような方策が挙げられます。

法令遵守と更新の監視

まず、食品表示法をはじめとする食品表示に関連する法律や規制は頻繁に更新される可能性があります。常に最新情報を収集し、内容をアップデートする体制を整えます。法務部門やコンプライアンス担当者を設置し、業界団体や行政機関との間で継続的に情報交換を行うことが重要です。

内部監査の強化

食品表示の正確性を保証するために、定期的に内部監査を実施します。監査では、実際の表示が法令に基づいて正確であるか、誤りがないかを厳密にチェックします。特に新商品が追加された際や法改正時には、表示内容を詳細に確認しましょう。

品質管理システムの導入

食品の生産管理におけるトータル品質管理(TQM)を導入し、製造過程から出荷まで情報の一元管理を行います。情報管理はデジタル化することが推奨され、表示の内容や履歴を追跡するためのソフトウェアを利用することで、誤りを即時に発見し修正することが可能です。

アレルゲン管理の徹底

アレルゲン表示は消費者の健康に直接影響を与えるため、その管理は特に厳密を期します。アレルゲン情報の正確性を確保するために、仕入れ先からの原材料情報を詳細に点検し、製品開発・製造段階での混入リスクを徹底管理します。

従業員教育の充実

食品表示に関する法規制、及び高品質な製品を提供するための内部プロセスについて、全社員に対して定期的に教育プログラムをおこないます。特に製品ラベルの制作に携わる部署の担当者には、法的義務と品質保証の観点から十分に理解を深めることが大切です。

チェックリストの整備と活用

製品開発から表示までの全プロセスにおいて製品ごとに具体的な表示チェックリストを作成し活用することです。チェックリストには法定表示項目の確認、アレルゲン有無の確認、栄養成分の検算などを必ず盛り込み、プロセスが一貫して正しく行われることを担保します。

外部専門機関との協力

食品表示について外部の専門機関による第三者評価を受けることで、内部では気付かない潜在的なミスを指摘してもらうことができます。これは特に表示内容が複雑な場合に有効です。

緊急対応計画の策定

万一誤った表示が発見された場合に備えて、迅速な対応ができるよう事前に緊急対応計画を策定しておきます。この計画には、お客様への迅速な情報提供、製品の回収、再表示、法的対応の手順を含みます。

食品表示とお客様コミュニケーション

食品表示は、お客様に有用な情報を提供するだけでなく、企業とお客様のコミュニケーションツールでもあります。正確な情報を提供することで、お客様は安心して商品を選ぶことができ、企業に対する信頼感を高めることができます。その上で、企業はお客様からの問い合わせに迅速かつ正確に対応することが重要です。カスタマーサービスを整備し、お客様からの質問や意見に迅速かつ正確に対応するとともに、ウェブやSNSを通じて製品の安全性や使用方法について広く情報発信を行いましょう。こうした取り組みにより、ブランド価値の向上とお客様の満足度を高めることができます。

食品表示と企業成長のリーダーシップ

経営者が食品表示の重要性を理解し、全社に明確なビジョンを示すことは、企業の法令遵守を強化するために不可欠です。これにより企業は、食の安全を確保しつつ、より高度な企業文化を形成することができるようになります。経営者は食の安全に関する具体的な方針を策定し、それを全従業員に理解させ、共有することが重要です。これにより、従業員は一体となって品質向上に取り組む姿勢を持つことができます。また、企業は最新の技術を導入して業務効率を向上させることで、お客様の期待を超える信頼基盤を構築します。具体的には、デジタル化による品質管理システムの強化や、アレルゲン情報の厳重な管理が求められます。従業員が日々の業務で品質を最優先にする文化を育成することは、企業の長期的な競争力を大きく高めます。このようなリーダーシップは、企業の持続可能な発展にとって極めて重要です。

まとめ

食品表示は、お客様に製品の品質や安全性に関する正確な情報を提供し、信頼性を高める重要な役割を果たします。これは法令遵守のための義務であるとともに、ブランド価値を向上させる手段でもあります。経営者は、この表示の重要性を理解し、法規制に対応し、品質向上の方針を策定することが重要です。トラブル防止策としては、法令更新への迅速な対応、内部監査、従業員教育、チェックリスト活用などが挙げられます。食品表示をお客様との透明性の高いコミュニケーションツールとして捉え、企業の持続的成長を支えるためのリーダーシップを発揮することが求められます。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

増田祐一

1980年京都府舞鶴市生まれ。

飲料メーカーの製造工場で品質保証業務を10年間経験する中で、品質トラブルをなくすための仕組みの整備と人材育成の重要性を認識する。

得意分野は品質コンサルティング、人材育成および労働衛生コンサルティングによる労働環境改善。

技術士(農業・食品)、労働衛生コンサルタント。

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