品質トラブルの事例集は、読んでいる間は怖いのですが、読み終わると「うちは大丈夫だろう」で終わりがちです。事例が他社の話だからです。そこでこの記事では、事例ではなく「型」で整理します。食品工場で起きるトラブルは、突き詰めると5つに分けられます。型が分かれば、自社のどこが弱いかを照らし合わせることができます。
型1|硬質異物の混入
何が起きるか
金属片、樹脂片、ガラス片が製品に入ります。消費者が口にすれば怪我につながるため、回収の判断が最も早く求められる型です。
なぜ起きるか
金属であれば、機械の摩耗、ボルトの脱落、刃のこぼれ、清掃器具の破損。樹脂であれば、コンベアベルトの欠け、容器の割れ、ブラシの毛。ガラスであれば、照明や計器の破損です。共通しているのは、いずれも「設備が壊れた瞬間」に発生していることです。そして壊れた瞬間に気づかなければ、そのまま製品に入ります。
どこで止められたか
出口に金属検知機やX線検査機を置くのは当然として、そこに頼りきると、ガラスや一部の樹脂は抜けます。止めるべき場所は手前です。始業と終業での器具の員数確認。破損時に生産を止める手順。そして、摩耗する部位を把握した計画的な保全です。異物の種類ごとの混入経路と検出方法については、食品工場の異物混入対策で詳しく整理しています。
型2|微生物汚染
何が起きるか
食中毒菌や腐敗菌が製品に残り、あるいは増殖します。健康被害に直結するため、影響は最も大きくなります。
なぜ起きるか
原料由来の一次汚染と、製造環境から移る二次汚染があります。実際に問題になりやすいのは後者です。洗浄が不十分な設備。結露した天井。清掃しにくい構造。そして、汚染区域と清潔区域の間を人が行き来する動線です。結露が絡む場合はカビの問題にもつながります。詳しくは食品工場のカビ対策をご覧ください。
どこで止められたか
加熱工程を持つ製品なら、そこが管理点になります。問題は、加熱後にどこかで拾ってしまう経路です。洗浄を「やったか」ではなく「効いたか」で確認しているか。拭き取り検査やATP測定で、洗浄の結果を数字にしているか。ここが分かれ目になります。検査手法の選び方は食品工場の微生物管理で解説しています。
型3|アレルゲンの混入・表示漏れ
何が起きるか
表示にないアレルゲンが製品に含まれます。量が微量でも、該当する方には重篤な健康被害が起こり得ます。
なぜ起きるか
共用ラインでの残留。粉の飛散。製造順序の誤り。原料を切り替えたのに表示を直し忘れた、という経路もあります。つまり、製造側と表示側の両方に入口があります。
どこで止められたか
製造側では、アレルゲンを含む製品を後に回す順序管理と、切替時の洗浄、そして洗浄後の検証です。表示側では、原料の仕様変更が包材に反映される流れがきちんとつながっているかどうかです。この2つは別部署が担当していることが多く、そこに隙間ができます。工程と表示の両面からの管理については、食品工場のアレルゲン管理にまとめています。
型4|化学物質・薬剤の混入
何が起きるか
洗浄剤、殺菌剤、潤滑油、殺虫剤が製品に混入します。異物と違って目に見えないため、発見が遅れやすい型です。
なぜ起きるか
すすぎ不足で残留する。容器を移し替えたために、中身が分からなくなる。食品機械用ではない潤滑油を使ってしまう。防除作業の薬剤が、稼働中のラインに飛ぶ。いずれも、薬剤の管理が現場任せになっているときに起きます。
どこで止められたか
薬剤を一元管理し、詰め替えを禁じ、識別を徹底すること。すすぎの完了を、pHや導電率、試験紙で確認すること。潤滑油を食品機械用に切り替えること。これらは労働者の健康を守る観点とも重なります。考え方は食品工場の化学物質管理で解説しています。
型5|表示のミス
何が起きるか
期限、原材料名、内容量、栄養成分の表示が事実と異なります。健康被害がなくても、回収と行政対応が必要になります。
なぜ起きるか
包材の取り違え。旧版の包材が残っていた。賞味期限の打刻設定を戻し忘れた。仕様変更が包材に反映されていなかった。ほぼすべてが「切り替えたとき」に起きています。
どこで止められたか
包材の受入時の照合。品種切替時に、ラインから前の包材を完全に除くこと。そして、切替後の初品を必ず確認することです。やることは単純ですが、忙しい日ほど飛ばされます。表示すべき項目と防止策の全体像は、食品表示のトラブル防止で整理しています。
5つに共通していること
型を並べてみると、共通点が見えてきます。ほとんどが「変わったとき」に起きています。設備を更新した。原料を変えた。人が入れ替わった。品種を切り替えた。季節が変わって結露が出た。平常運転が続いているときには、あまり起きません。だから、変更点管理と変化点管理が、5つすべてに効きます。
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そして、出口の検査に頼ると高くつきます。金属検知機で拾うのは、すでに製品になったあとです。その1本を止めるために、前後のロットを止めることになります。工程の中で止めたほうが、費用も時間も小さく済みます。
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最後に、気づいた人が言えるかどうかです。どの型でも、最初に異常に気づくのは現場の従業員です。「いつもと音が違う」「今日は妙に結露している」「さっきの包材、前のロットのじゃないか」この一言が上がってくる職場かどうかで、被害の大きさが変わります。報告が上がらない会社に何が起きるのかは、食品会社が廃業に至る理由で具体的に見ています。仕組みを作っても、報告が上がらなければ動きません。品質の問題は、最後は人と職場の問題に行き着きます。
まとめ
食品工場の品質トラブルは、5つの型に整理できます。硬質異物、微生物、アレルゲン、化学物質、表示ミスの5つです。いずれも「変わったとき」に集中して発生します。出口の検査に頼るほど、対応の費用は大きくなります。そして、現場が異常を言える職場であることが前提になります自社がどの型に弱いのか。まずはそこを確かめるところから始めてみてください。
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