品質管理のためのQC7つ道具について

QCとは、品質管理(Quality Control)の略です。QC7つ道具は品質管理の基本的手法であり、特に食品工場においては日常管理や品質向上のために用いるツールとして重要です。QC7つ道具の内容を理解し効果的に活用することで、品質管理レベルを向上させるだけでなく、生産性向上にも繋がります。今回はQC7つ道具について、詳しく解説したいと思います。

QC7つ道具の導入背景と特徴

第二次世界大戦後の日本において米国の品質管理手法を基に発展しました。1960年代の高度経済成長期、日本は戦後の復興から立ち上がり、経済が急速に成長しました。経済成長率は年平均で10%前後を記録し、世界でも類を見ないほどの発展を遂げました。一方、次第に国際競争が激化する中で、より高い製品品質が求められるようになりました。従来の経験や勘に頼った品質管理では、客観的な評価や改善が難しかったため、データに基づいた科学的な品質管理手法の必要性が認識され始めました。QC7つ道具は、このような背景から誕生しました。現場の従業員でも簡単に使えるシンプルで実用的なツールであり、品質問題の原因究明、改善策の立案、効果の検証など、様々な場面で活用されています。QC7つ道具は単なるツールではなく、品質向上のための考え方そのものを体系化したものであり、企業がより高い品質の製品を安定的に提供するための基盤となっています。

問題の見える化と本質の把握

複雑な問題を視覚的に見える化することが出来ます。例えば、パレート図は問題の大きさを棒グラフで表すことで、どの問題が最も重要なのか明確にするツールです。また、ヒストグラムは、データの分布を図で示すことで、ばらつきや異常値の有無を視覚的に確認することができます。これにより、問題の原因を特定し、改善策を検討するためのヒントを得ることができます。

科学的データに基づいた意思決定

経験や勘ではなく、データに基づいた客観的な分析が可能となります。例えば、散布図は二つの変数間の関係性をグラフで表すことで、原因と結果の関係を明らかにする手法です。また、チェックシートは、データを体系的に収集し、分析するためのツールです。データに基づき正確な原因究明を行い、効果的な改善策を立案することができます。

全員参加による問題解決

従業員一人ひとりが問題意識を持ち、改善活動に積極的に参加するための環境づくりに役立ちます。例えば、特性要因図(魚の骨図)はグループで問題の原因を洗い出し、全員で解決策を検討する際に有効なツールです。また、企業内の従業員が自主的に集まり、品質管理や改善活動を行う小集団活動であるQCサークル活動をおこなう上で、従業員のモチベーション向上や組織全体の活性化に繋がります。

QC7つ道具の内容

ここからは、QC7つ道具の各手法について詳しく解説します。

パレート図

パレート図は、問題の原因と不良品の発生頻度を棒グラフと折れ線グラフの組み合わせで表したものです。不具合品の発生に最も影響力の大きな要因を特定するのに役立ちます。この手法は「80%の結果は20%の原因から生じる」という考え方(パレートの法則)に基づいています。多くの問題の中から最も大きな影響を与えている問題を明確にすることで、問題の優先順位付けに役立ちます。これにより、限られた資源を最も効果的に活用し、改善効果を最大化することができます。⓵問題や原因、不良品のデータを収集、⓶重要度に応じて整理し分類、⓷棒グラフと累積線を作成 の3つの手順で作成します。

特性要因図

特性要因図は、特定の問題の根本原因を体系的に分析するための手法です。すなわち、人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、方法(Method)などの要因(4M)を大骨で表し、さらに中間要因を洗い出して行くことで問題解決に導きます。「フィッシュボーン図」とも呼ばれ、最終的に魚の骨の形が完成します。⓵解決したい問題を明確に定義、⓶主となる骨(主骨)を書き、主要要因を大骨として追加、⓷大骨から中間要因を細かく分けて追加 の手順で作成します。大骨に計測、検査などの測定値(Measurement)、温度、湿度、騒音などの環境(Environment)を示す場合もあります。

グラフ

グラフは、データを視覚的に表現するためのツールであり、さまざまな種類があります。例えば棒グラフは、数量比較に適しており、製品の売上などを視覚化します。折れ線グラフは時系列データの変化を示し、トレンドを把握するのに役立ちます。円グラフは全体に対する割合を示し、製品の構成比や予算配分を視覚化するのに使用されます。以下に記述するヒストグラムや散布図もグラフの1つとなります。目的に応じてどのようなグラフ形式を選択するかが重要になります。また、一目で理解できるようにタイトルや凡例をしっかりと盛り込むことも大切です。

ヒストグラム

ヒストグラムは、データの分布状況を示すための棒グラフです。データのばらつきや分布形状を視覚的に示すことができ、特に定量データを解析する際に使用します。⓵分析対象のデータを収集し、データ範囲を階級に分類、⓶各階級の出現頻度をカウント の手順で作成します。ヒストグラムの形状には、正規分布型、二峰型、片側切り詰め型、離れ小島型などがあり、それぞれなぜそのような形になるか要因が異なります。そのため、ヒストグラムの形状から要因を推定することが出来ます。一般的に、工程が正しく管理されている場合には正規分布に従います。すなわち、ヒストグラムの分布は中央が高く、左右対称な山型の分布となります。一方、二峰性は2つの山を持つ分布です。異なる種類の製品が混ざっていたり、工程に問題がある可能性があります。また、片側切り詰め型はある一定の値より小さい(大きい)データがない分布です。測定範囲が限られている場合や、不良品が取り除かれている場合に見られる形状です。離れ小島型は他のデータから大きく離れたデータ(外れ値)がある分布であり、測定ミスや異常な状況を示している可能性があります。

散布図

散布図は、2つの数値データ間の関係性を示すためのグラフです。各数値データをX軸およびY軸からなる平面上にプロットし、相関関係(正の相関、負の相関、無相関)を視覚的に示します。正の相関は、一方の変数の値が増加すると、もう一方の変数の値も増加する関係です。また、負の相関は一方の変数の値が増加すると、もう一方の変数の値が減少する関係です。一方、2つの変数の間に特別な関係が見られない場合は無相関と表現します。ある要因が別の要因にどのような影響を与えているのかを分析することができ、原因と結果の分析に役立ちます。例えば、ものづくり工程の製造条件の変更が製品特性にどのような影響を与えるかの関係を把握する際に使われ、より良い品質改善のための根拠を探索することができます。

管理図

管理図は、製品の品質特性が安定しているかどうかを判断するためのグラフで、工程管理の重要なツールです。中心線と上下の管理限界線で構成されており、この範囲内にデータが収まっているかを確認することで製品特性や工程が安定しているかどうかを判断できます。管理図から外れるデータ(異常点)が出現した場合、工程に何らかの異常が発生している可能性が高く、早期に原因究明を行う必要があります。また、管理図の推移からトレンドを把握することで、将来の品質状態を予測することができるため、異常の予兆を早期に発見することにも役立ちます。なお、上下の管理限界線は工程のばらつきを考慮した上で、許容できる上下限値とします。この値を決める上では、平均値とや標準偏差、確率分布や工程能力指数などの統計に関する知識が必要になります。

チェックシート

チェックシートは、業務や作業手順の確認項目をリスト化したシートです。シンプルで利用しやすいのが特徴で、確認漏れを防ぎ業務の効率化するのに役立ちます。あらかじめ項目が決められたシートに、ただチェックを入れるだけでデータが収集できるため、誰でも簡単に、短時間でデータを集めることができるのも特徴です。ものづくり現場においては、誰でも簡単に記入できるように、シンプルで分かりやすいデザインにすること、日付、担当者、場所など必要な情報を記入できるようにすること、現状に合わせて項目を定期的に見直すことが重要です。

QC7つ道具の活用法と課題

QC7つ道具を活用することで、多くのメリットがありますが、導入においてはいくつかの課題も挙げられます。はじめに、それぞれのツールの目的や特徴についての正しい理解です。ツールを活用することの目的を見失わないことが重要となります。日常管理に落とし込む上で、例えば管理図ではデータを入力する作業が仕事になりがちです。データを入力した後にデータの傾向をしっかりと確認し、トレンドから異常の有無や異常の予兆をしっかりと掴むための解析をすることが重要です。このような目的を達成するには、品質に対するマインド醸成も重要となります。すなわち、職場内において品質管理や品質改善活動が文化として根付かせることが必要になります。そのために、経営者や管理責任者が自ら率先して行動して従業員の意識改革を促すことが重要です。全社員が自発的に問題を発見し、解決策を提案する文化を育てることが、持続可能な品質活動に繋がります。

まとめ

QC7つ道具を使った品質管理の取り組みは、結果として企業業績の向上、お客様満足度の向上、または市場における信頼性の構築など大きなアウトプットに繋がります。QC7つ道具をツールとして正しく理解し、それぞれの目的に応じて適切に日常管理に落とし込むことで、その効果を最大限に発揮することができます。変化の大きな市場において、食品製造業にもデジタル化や国際化の波が押し寄せています。このような変化にしっかり対応するためにも、品質管理の基本的手法であるQC7つ道具の理解に繋がれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

増田祐一

1980年京都府舞鶴市生まれ。

飲料メーカーの製造工場で品質保証業務を10年間経験する中で、品質トラブルをなくすための仕組みの整備と人材育成の重要性を認識する。

得意分野は品質コンサルティング、人材育成および労働衛生コンサルティングによる労働環境改善。

技術士(農業・食品)、労働衛生コンサルタント。

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