食品工場で品質事故を防ぐために、変更点管理と変化点管理は非常に重要です。食品事故は変更点や変化点をきっかけとして発生することが多いからです。今回は変更点管理と変化点管理とは何かを説明し、どのようなポイントが重要になるか解説したいと思います。
変更点管理とは何か
変更点管理は、変更点をきっかけとする食品事故を防止するための管理を言います。変更点とは、前もって計画した変更を意味します。すなわち、人が意図的に実施したものになります。変更点は、例えば新製品の導入、製造工程の変更、原材料の変更などが含まれます。これらは製品やサービスの改善を図るために行われることが多いですが、適切に管理されないと、予期しない事故が発生してしまうおそれがあります。そのため、適切にリスク評価し、見積もられたリスクに備えて管理する必要があります。これを変更点管理と呼んでいます。
変化点管理とは何か
変化点管理は、変化点をきっかけとする食品事故を防止するための管理を言います。変化点とは、前もって計画されていない、予期せぬ状況の変化を意味します。従って、人が意図的に実施したものではありません。変化点には新しい品種や気候変動による原材料の品質変化、工場内の温度や湿度、空気中の粒子などの環境要因の変化、お客様の嗜好や競合他社の動きなど市場動向の変化が含まれます。変化点による影響を事前に把握し、リスクを低減することが重要で、適切にリスク評価し、見積もられたリスクに備えて管理する必要があります。これを変化点管理と呼んでいます。
変更点・変化点管理の実施方法
変更点管理と変化点管理を効果的に機能させるためには、組織内にしっかりとした仕組みを設けることが重要です。仕組みとしては、例えば変更点・変化点に対するリスク抽出や対策のための会議体の設置が挙げられます。また、下記のようにリスク評価の手順を定めることが重要になります。1つ目に、各部門からの情報を集約し、どのような変更点や変化点があるのかを把握します。すなわち、リスクの特定です。生産部門、品質管理部門、工程管理部門など部門を横断して情報収集と共有をおこなうことで、全体で状況を把握します。変更点や変化点の内容を明確にし、どのようなリスクが伴うかを把握します。2つ目に影響範囲の特定です。変更が影響を与える部門やプロセスを特定します。3つ目に潜在リスクの洗い出しです。食品の安全性、製品品質、法規制、設備、人に関するリスク要因を全て抽出します。リスク抽出をおこなう際には具体的なデータを用いてリスクの重大性と発生可能性からリスクを見積もり、優先順位付けをおこないます。その上で、リスクに対する具体的な対策を検討して実行します。実行する上では、責任者を明確にすることも重要になります。実行においては進捗状況を確認しながら進める必要があります。すなわち、会議で決定された対策の実行状況を確認し、その効果を検証します。その上で、変更点・変化点管理の結果を振り返り、新たな改善点を見つけ出して次のステップに結びつけることも重要になります。
定期的な会議の実施
変更点管理と変化点管理を円滑に進めるためには、会議体を設置することが重要ですが、その頻度も重要です。すなわち、変更点・変化点の内容を確認し、リスク抽出する仕組みを「日々」設けることで、迅速な情報共有と問題解決が可能になります。最近の生産データや市場の変化から、新しい変更点や変化点が生じていないかを「日々」確認すること。新規の原材料の導入や、工程の見直しの有無などを「日々」確認することが重要となります。また、抜け漏れなくリスク抽出をするためにフォーマットを整備することも有効です。各部門からの情報をもとに常に抜け漏れなくチェックするポイントを決めることで、抜け漏れのない高いレベルのリスク抽出が可能となります。また、緊急性の高い変化があった場合には、日々の会議体とは別にその都度会議を開催することも重要です。迅速かつ柔軟に対応する姿勢が重要になり、迅速な意思決定と工場運営のリスク低減に役立ちます。会議には必ず、各部門からの責任者やメンバーが参加します。生産部門、品質管理部門、工程管理部門の責任者やメンバーの専門知識を生かすことで、多角的な視点からリスクを評価することが可能となります。これにより、変更点・変化点管理における大切な情報を全体で共有しながら進めることも可能になります。会議の内容は議事録として記録することも重要です。議事録に記録することで、事後の確認や改善に役立てることができるためです。議事録には出席者や決定事項を必ず記載します。誰が参加したかを明確にし、責任の所在を確認することで事後のフォローアップが容易になるためです。
リスク抽出のフォーマット策定
リスクを効果的に管理するためには、標準化されたフォーマットの導入が有効です。このフォーマットを使用することで、リスク抽出のプロセスが明確になり、管理が容易になります。フォーマットに盛り込む内容としては、下記が挙げられます。1つ目に変更点・変化点の内容です。すなわち、何をどのように変更しようとするのかを具体的に記載します。2つ目に、影響を受ける部門についてです。どの部門が影響を受けるかを特定し、その影響度を確認します。3つ目に寄与するリスク要因です。食品安全、品質、法規制、設備、人員に関するリスク要因を洗い出します。4つ目にリスク評価の結果です。リスクの重大性と発生可能性からリスクの大きさを見積もり、リスクマトリックスの活用により視覚的に判りやすく表現します。5つ目に対策案の検討です。各リスクに対する具体的な対策案を提案し、実施すべき対策を明確にします。6つ目に実施後のレビューです。実施された対策やその結果を記録し、次回の会議でのレビューに備えます。これによって、各対策の効果を定期的に確認することができ、必要に応じて対策を見直すことが可能になります。
従業員教育の重要性
社員全員が変更点管理と変化点管理の重要性を理解し、積極的に参加するためには、定期的な従業員教育が欠かせません。教育を通じて、リスク管理の基礎知識を広く浸透させることを目指します。教育の内容としては、過去の食品事故や品質問題について研究し、どのようにリスク管理が行われたのかを分析するなど、具体的事例を用いることで理解が深まる場合があります。具体的な改善策や教訓を学ぶことで実践的な知識を得ることができ、リスク抽出のプロセスやその重要性について理解を深める上で有用です。また、実際の業務に即したシミュレーションを行い、変更点や変化点が生じた際の対応力を養う訓練も有効です。訓練の結果を成果として共有し報告することで、さらに理解が深まることが期待できます。
まとめ
食品工場において品質事故を防ぐために、変更点管理と変化点管理は非常に重要となります。変更点管理は、意図的な変更によるリスクを評価し対策を実施することを指し、変化点管理は予期しない変化に対処するためのプロセスです。これらの管理を効果的に行うためには、リスク抽出や対策のための定期的な会議体の設置が重要です。具体的には、情報収集、影響範囲の特定、リスク評価とフォーマットの活用が求められます。また、全従業員への教育により、リスク管理の理解と積極的な参加を促進するなど、仕組みを常にブラッシュアップする努力が求められます。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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