2026年の夏も暑い日々が続いています。特に過去数年間は記録的な高温が頻発しており、2024年は観測史上最も高い気温偏差(+1.48)を記録しました。また、2025年の平均気温も基準値(1991〜2020年の30年平均)を(+1.23)上回り、観測史上第3位の高温となりました。このような状況の中、特に職場における熱中症予防対策が急務になっています。2025年の職場における熱中症による休業4日以上の死傷者数は1,803人で、死亡者数は19人にも及んでいます(2025年(令和7年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(厚生労働省))。このような背景の下、2025年に改正労働安全衛生規則が施行され、「職場における熱中症予防対策が罰則付きで義務化」されました(職場における熱中症予防対策について)。今回は2026年7月15~17日の3日間にわたって東京ビッグサイトで開催された猛暑対策展について、労働衛生コンサルタントとしての立場から最新情報をレポートします。

同時開催の展示会案内看板。7・8ホールへのシャトルバス乗り場も明記されています。
目次
2026年の猛暑対策展の特徴
2026年の猛暑対策展は例年にも増して、各企業が熱中症予防について多くのアイテムを出展していました。いかに他社と差別化するかを工夫されており、それぞれに特徴的な長所を提示されているのが印象的でした。熱中症に対して本気で備えなければ大変なことになるという危機感の表れであるようにも感じました。その中で、今年初めて屋外ブースでの出展がありました。その名も「暑い中で体感するエリア」。屋内の涼しい場所だとそのツールの効果が来場者に伝わりにくいため、屋外ブースで体感してもらうという工夫でした。もちろん私も体感させて頂きました。

暑い屋外で製品の性能をリアルに体感できる新企画。「暑い中で体感するエリア」の案内看板

屋外に特設された「暑い中で体感するエリア」の展示風景
休憩スペースの工夫(冷却シェルター)
印象的であったブースをいくつか紹介します。まずは、最もリスクの高い屋外作業者を意識した熱中症対策シェルターです(株式会社山善)。横からスポットクーラーで冷たい空気を送風し、上部から暑い空気を効果的に逃がす構造になっていました。屋外のWBGT32.0℃に対してシェルター内はWBGT21.8℃ととても涼しかったです。こまめな休憩や水分補給だけでなく、直射日光を遮り物理的に身体を冷却できる環境づくりは非常に重要と思いました。また、屋内展示でしたがエアーシャワー型の冷風室も印象的でした(三共空調株式会社)。エアコンが設置されたエアーシャワー室での1分間の送風で身体が芯から冷えました。設定時間は変えられるようです。

山善株式会社が出展した「冷却シェルター」。テント内部の涼しさを実際に体験できる仕様になっていました

外気温は30℃を超えていましたが、冷却シェルター内はWBGT値 21.8℃と、涼しい環境が保たれていました

三共空調株式会社が展示した、クールダウンに活用できる個室型シェルター「取るねつ」
着衣の工夫(冷却ベスト・送風ファン・衣類冷却)
その他、屋内にもエアコンをつけていないホットな空間で冷却ベストや冷却スプレーの効果を体感できるコーナーがありました。冷却ベストはドライアイスを用いたもの、冷却水を用いたもの、送風ファンを活用したもの、ペルチェ素子の冷却効果を用いたものが主でしたが、例年と比べて斬新な技術を取り入れたものはなかった印象です。一方で、面白いなと思ったのは、着用前に衣服を冷蔵庫で冷やして着るというもの(フットマーク株式会社)。宇宙産業から生まれた「Texion」という新素材を活用することで、表面温度が最大4℃も下がるとのことでした。ちょっとした工夫で取り組めるのが良いと思いました。

新素材「Téxion」を活用した暑さ対策グッズ「冷やしトク」のブース大型看板(フットマーク株式会社)。

冷蔵庫で冷やして着用する新感覚の暑さ対策グッズ「冷やしトク」。ショーケースとマネキンによる製品ディスプレイ。
飲料の工夫(アイススラリー)
また、例年にも増して「アイススラリー」に注目が集まっているように思いました。アイススラリーとは細かい氷の粒子が液体に分散した状態の飲料のことで通常の氷とは異なります(通常の氷は結晶が大きくて流動性が低い)。熱中症を予防する上で水分補給や塩分補給、こまめな休憩が大切ですが、アイススラリーの流動性の高さは飲みやすさとともに、胃の中をゆっくりと流れるため、深部体温を下げる効果があります。その上で、今後もとくに製造現場を中心に普及していくものと考えています(赤城フーズ株式会社、大正製薬株式会社)。

赤城フーズ株式会社が展示した、身体の中から冷やす熱中症対策の新提案「アイススラリー」

大正製薬株式会社が展示した、身体を芯から冷やす熱中症対策飲料「リポビタンアイススラリー」
救命のために(救護用品)
熱中症は予防が何より大切ですが、発症してしまった後にどうすれば良いかも極めて重要です。昨年まで発症後の処置についての展示はなかったように記憶している中で、熱中症救護袋の展示がとても印象的でした(ナインバード株式会社)。熱中症が進行して熱射病と呼ばれる最終段階になると、多臓器不全をおこし命に危険が及びます。救急車が来るまでの時間にいかに体内深部の温度を下げるかが重要ですが、その場で正しい救護をするのは非常に難しいと思います。被災者を救護袋に入れてホースで水を注入。全身を冷却することで深部体温を下げる救護は、いざというときのAEDのような備えで重要と思いました。2025年8月頃に大学と協同で開発された新しいツールとのことでした。また、上記の手前段階ですが、熱中症応急処置キットの展示もありました(谷沢製作所)。いざという時に困らないための備えとして、これらのようなグッズは職場に1つ準備があっても良いかと思います。

熱中症発生時の緊急対応と搬送・冷却を行うための専門アイテム「熱中症救護袋(ナインバード株式会社)」

箱を開けるだけで応急手順と必要なアイテムがすぐに取り出せる「熱中症応急処置セット」(谷沢製作所)。
熱中症予防へのDX活用
熱中症予防対策として、朝日機器株式会社が働くスポット空調を出展していたのも興味深かったです。これまでのスポットクーラーは定位置をスポット的に冷却するものですが、展示されていた商品(FoLLoAS(フォロアス))は人の頭(丸い形)をAIが画像認識し、頭を追う形で特定の人を連続的に冷やすというものでした。特に製造現場や倉庫など、広い現場での単独作業などの熱中症予防対策に非常に効果的と感じました。

朝日機器株式会社が展示したスポット空調設備「FOLLOAS(フォロアス)」ユニット(朝日機器株式会社)。人の頭をAI画像検知して追うことで、ピンポイント冷却を可能にします。
労働安全衛生展について
なお、労働安全衛生展の様子ももちろんウォッチしています。印象的だったのは、2024年の化学物質管理の法令改正を受けて、各現場が「いかに抜け漏れなく楽に管理できるか」がポイントになっていることでした。そのための注目技術としては、SDSを読み込ませての「AI-OCR」。読み取った文字情報をAIによりカテゴリー分類し、その情報をもとに関連法律と紐づけてリスク抽出するという自動化システムでした(株式会社アイアンドディー・株式会社ケミカン など)。化学物質管理は現場担当者の負荷が重たくなりやすく、管理者との認識のずれが負荷を増すという負のサイクルにも陥りがちです。これらの課題解決においても、ツールの活用は非常に有意義であると感じました(化学物質の自律的な管理について)。
おわりに
今回は2026年7月の猛暑対策展に参加して、労働衛生コンサルタントの視点から例年の展示にはない新しい情報や気になったものを中心にトピックスとしてお伝えしました。様々なツールが展示されていましたが、製造現場の状況はそれぞれ異なるため、どのようなツールを選択して導入するかが最も重要な判断軸になると思います。もし判断に迷われたり、もっと広く深い知見を教えて欲しいなどのニーズがありましたら、気軽にお問合せください。
なお、当記事のさらに詳しい内容についてPDFレポート(計15枚)にまとめております。無料でダウンロード可能ですので、是非ご利用ください。
増田 祐一
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